書評 酔象の流儀(復刻)
興味がないと全く手に取られないジャンルというものがある。
だいたい本読みというのは、話題の小説なんかは一通り読んでみるものだ。
しかしながら、そんな中でも一見無視されがちなジャンルがある。
それが、歴史だ。
私は歴史には人よりも詳しいし大好きだから、歴史というだけで食いついてしまうタチであるのだが、そうでない人に言わせれば歴史とは退屈に他ならないという
その気持ちもわからないではない
だいたい、歴史ジャンルというのは、こと読み手に対してある一定の知識を求める。その時代の風習であるだとか、登場する人物の関係であったりだとかだ。
また、読み方も複雑な上に登場人物の名前が似通っていたりする。
歴史上の人物の名前には通字というのがあり、親族間である一文字を共有したりするので、何もしらない人からみたら誰が誰だがわからなくなる
例えば信長の息子にしたってそうだ
名前の頭に信という字が御揃いでつけている。名前だけみればおそらく信長の息子かもとわからなくもないが、この三人を兄弟順に並べろと言われたら苦労する人もいるだろう。
それに物語にはこの三人だけではなく、信光や信清、信広なんかもでてくる
もはや、ここまで知らないきたら何も知らない人はお手上げだろう。
多少歴史に詳しい人であればこんなものすぐ理解できる問題であるが
しかしながら、多少歴史に詳しい程度ではわからないであろう歴史に埋もれた登場人物がでてくる作品がある。それがこの
酔象の流儀 朝倉盛衰記
酔象の流儀 朝倉盛衰記
作者: 赤神諒
出版社/メーカー: 講談社
発売日: 2018/12/20
メディア: 単行本
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である。
朝倉と聞いてやはり思い浮かぶのは戦国時代の朝倉氏である。
そして、やはりというか盛衰記という題からも、この本も戦国時代の朝倉氏の栄誉ある時代と滅亡までの期間を描いた内容であると推測できる。
ここまで聞いて、多少詳しい人はピンとくるに違いない。
ハハン、この手の本の主役は朝倉家を支えた名称「朝倉宗滴」であろうと
しかしながら、この本の主役はそのどちらでもない
この本の主役は戦国朝倉家の屋台骨を支えたと言われる山崎吉家である。
さらに詳しい人はピンとくるかもしれないが、知らない人のためにも一言だけ紹介すると
山崎吉家とは朝倉家滅亡の決定的な戦となった刀根川の戦いで殿を務めて戦死した剛の武将であると
この一言だけ歴史好きな人であるならば、この本を手にとって読んでみたいとかられるはずである。
何故なら、つまるところ歴史好きというのは、知らない者を知ろうとする人たちだからだ。
こんなマイナーな表にでない武将がピックアップされていれば、どういった人物であれば知ろうとするはずだ。
さて、この本には山崎吉家がどのようにして朝倉家で活躍し、どんな思いで殿の役を買って出死んでいったのかが書かれている。
もちろん、私たちの大好きな「朝倉宗滴」も活躍する。
朝倉氏というのは、信長の野望というゲームでは家臣団はぱっとしないものも史上でいえばその存在感の大きさは多大に感じられる。
義景の父親、英林考景は名称としてしられているし、戦国時代には将軍義昭が幕府再興のために力をたよったほどだ。
しかしながら、現代の我々にとって朝倉氏のイメージは決していいとは言えない。その一役大いに担っているのが、義景の存在であろう。多くのメディアでも彼は暗愚な人として描かれる。
残念ながら、この本でも義景というのはいいとこのお坊ちゃんといった感じで書かれている。
義景が愛していたのは、血まな臭い戦場ではなく、煌びやかな生活でであった。
そんな義景にも男の意地というのがある。それが、本の最後に朝倉家が滅亡するところで描かれている。
残念ながら、その意地というのがあえない結果になってしまうのであるが
さて、そんな愛すべき朝倉家の名称、宗摘の一番弟子として描かれる山崎吉家
彼の天下取りへの挑戦を是非、劇中で体感してほしいと思う。