働いて二週間で会社潰れた

歴史本や小説や映画などの感想が書ければなと思います。

書評大友二階崩れ(復刻)

武士と我々市井の人々を分ける要素に精神面での要素がある。

 

江戸時代に山鹿素行と人物がいた。彼には一つの悩みがあった。

その悩みはおそらく江戸期の多くの武士が抱いていた悩みであろう

すなわち

武士とは何か

である。

 

武士とはいわずとしれた戦う集団である。戦争が起きた際に先陣を切ってでばっていくのが武士の役目である。

すなわち、武士の生業とは戦にこそあった。

しかしながら、江戸期徳川幕府による平和は武士のそういった側面を否定していた。

もはや、武士は不要な存在であるといえた。

 

武士とは何か、そう思い悩んだ素行はこうつぶやく

「武士というのは、物を売らないのに暮らし、何も耕さないのに食し、家を作らないのに宿を借りる」

この世から戦がなくなり武士というのはその存在を否定されていたのだ。

何もしないのに暮らしていけるのはただの遊民である。何もしないのに民を虐げているのは存在そのものが罪に等しい

 

であるるならば武士は何をするべきであるのか。何のために存在しているのか

その答えを素行はついに見出す。

 

「およそ士の職というのは、主人を得て奉公の忠をつくし、同僚に交わって信を厚くし、独りをつつしんで義をもっぱらとするにある」

 

すなわち、武士というのは聖人たれというのが素行の見解である。

天下に君臨する武士がその民や同僚や下々のものに慕われる存在でなければならない。

そうすることで、天下は安んじるのだと。そして民はそんな武士に対して敬意をいだく、彼からがいるからこそ平和なのだと。

 

このように武士というのは我々と精神面では大きな剥離がある存在であったといえる。

 

さて、前向きが長くなったが本日紹介する本はこの本である。

 

大友二階崩れ
大友二階崩れ
作者: 赤?諒
出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
発売日: 2018/02/21
メディア: 単行本
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戦国時代好きなら必ず知っているであろう名門大友家の政変二階崩れ

その問題は息子である宗麟とその父親である義鑑との家督争いであった。

義鑑は長兄である宗麟に家督を譲らずその弟に家督を譲ることを望んだ。しかしながら、それをよしとしない宗麟は父である義鑑を弑逆することになる

 

変のあらましはこんなところであるが、本作の主題はそう変の謎に挑むとか、宗麟の政治手腕だとかそういったものではない

そもそもこの本は元の題名は義と愛とであった。おそらく、著者が一番主張したかったのもこれであろう。

 

主人公は大友家の重心「吉弘鑑理」である。

さて、この吉弘は主家に対して忠義の人物で、当初は宗麟暗殺計画を語る義鑑を諌めようとした。しかし、吉弘の意思は固く吉弘は自らの忠義のために意に反して義鑑の計画を進めようとした。しかし、そこで二階崩れが発生し、忠臣吉弘鑑理はあわや大友家一の反逆者となってしまうのである。

 

 

作中でも周りの者はみなこうならば大友家と一戦交えると意気揚揚であるが、吉弘鑑理だけがこれに反対する

何故か

忠臣だからだ。

自らの意地のため武士道をつらぬきとおすために吉弘鑑理はどんな理不尽な目に合うと主家を裏切るようなことはしない

さて、そこで「義と愛と」だ。

 

家中一の忠臣は自分な理不尽な要求をする主君と愛する者が同時に危機に瀕した時、自分の主とどちらをとるのか?

おそらく、どちらが正しいかという答えとうわけではないであろう。どういう生き方にするかにある。

 

武士の生きざまに魅せられた本であった。